中国検索大手の百度(Baidu)が、自動運転タクシー「Apollo Go」のオーストラリアおよび東南アジア展開に向けた交渉を進めている。同社の自動運転部門幹部が明らかにした。
百度の自動運転部門海外事業責任者であるHalton Niu氏によると、Apollo Goはオーストラリア政府や東南アジア各国の当局と、自動運転車両の導入に向けた協議を行っている。特にシンガポールとマレーシアが優先市場として位置づけられており、早ければ2025年内のサービス開始を目指している。
同社が海外展開を加速させる背景には、中国国内での事業が軌道に乗り始めたことがある。Apollo Goは武漢を筆頭に中国の複数都市で、車両単位での収益化を達成。1台あたりの運用で利益を生み出す段階に到達したという。現在、世界で1000台以上の車両を運用し、累計1100万回以上の走行実績を積み重ねてきた。
価格競争力の高さも海外展開の追い風となっている。米国でのロボタクシー運賃が1マイルあたり約2ドルであるのに対し、中国企業は35セント程度で提供可能。政府補助金や効率的なサプライチェーン、人件費の差が、この価格差を生み出している。
欧州市場への参入も視野に入れている。米配車大手Lyftとの提携により、2026年からイギリスとドイツでのサービス開始を計画。スイスには現地法人を設立し、現地採用を進めている段階だ。データの現地保管など、規制当局の懸念事項にも対応する準備を整えているという。
東南アジアは、交通渋滞の解消や排出ガス削減を目指す各国政府が、先進的な交通技術の導入に積極的な姿勢を見せている。シンガポール副首相が百度のキャンパスを訪問するなど、政府レベルでの関心も高まっている。
百度は2013年から自動運転技術への投資を開始し、数十億ドル規模の開発費を投じてきた。資産を保有しない身軽なビジネスモデルを採用し、現地の交通事業者やフリート運営会社との提携を通じて、初期投資を抑えながら市場拡大を図る戦略だ。
ゴールドマン・サックスの予測によると、2030年までに世界で数百万台規模の商用自動運転車両が稼働する見込み。中国のロボタクシー市場は、2025年の5400万ドルから2035年には470億ドルまで成長すると予想されている。
米国のWaymoやCruiseが国内展開に注力する中、中国企業は積極的な海外進出により、グローバル市場での主導権争いに参戦している。技術の成熟度と価格優位性を武器に、アジア太平洋地域から世界市場への浸透を図る百度の動きは、自動運転業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。


