中国深センに拠点を置くUBTECH Robotics社が、数百体規模のヒューマノイドロボット「Walker S2」の産業施設への出荷を開始した。同社によれば、世界初となる人型作業ロボットの大規模導入事例として、製造業の自動化に新たな段階が訪れる可能性がある。
11月中旬から本格的な生産拡大に踏み切った同社は、12月末までに500体の出荷を計画している。すでに第一陣のロボットは、組み立てラインで長時間の立ち作業を必要とする複数の工場に到着し、稼働を始めている状況だ。
今年の受注総額は8億元(約160億円)に達しており、この数字は産業界からの強い需要を物語っている。9月には中国の大手企業から2億5000万元規模の先進ロボットシステム発注があり、四川省の企業からは1億5900万元、広西チワン族自治区のプロジェクトでは1億2600万元、湖北省のMiee Autoからも1億元超の契約を獲得している。
自動車業界からの関心は特に高く、BYD、吉利汽車(Geely Auto)、一汽フォルクスワーゲン、東風柳州汽車といった大手メーカーが軒並み採用を決定。電子機器受託製造大手のFoxconnも、物流作業の支援にWalker S2を導入する計画を進めている。これらの企業は、人間の監督を最小限に抑えながら24時間体制での安定稼働を実現することを目指している。
Walker S2の最大の特徴は、独自のバッテリーシステムにある。ロボット自身が数分以内に電源パックを取り外して交換できる仕組みを備えており、人間の介助なしに長時間のシフトに対応できる。これによって稼働時間のロスを最小限に抑え、歩行や物品の持ち上げといった継続的な作業を可能にしている。
7月から産業向けに販売を開始したWalker S2は、人間に近い身長と頑丈な構造を持ち、関節の動きも人間の動作を模倣している。重量物の取り扱いと精密な指先のコントロールを両立させる設計により、製造現場での多様なタスクに対応できるという。
同社の業績も好調で、2025年上半期の売上高は前年同期比27.5%増の6億2100万元を記録。粗利益は17.3%増の2億1700万元となり、損失額は18.5%縮小して4億4000万元となった。ヒューマノイドロボット事業が売上全体に占める割合は、前年の10%から30%へと大幅に上昇している。
株式市場での評価も高く、同社の株価は年初来150%以上上昇して133香港ドルに達している。シティグループやJPモルガンなどの大手金融機関は引き続き買い推奨を維持し、目標株価を170香港ドル以上に設定している。2023年に香港証券取引所にロボティクス企業として初めて上場を果たした同社は、この分野でのリードをさらに広げつつある。
初期の工場テストでは、制御された実験室環境ではなく、実際の製造現場や倉庫でWalker S2が良好なパフォーマンスを発揮していることが確認されている。今後は製造業での人手不足解消という当面の課題に対処しながら、物流業やサービス業など他の産業分野への展開も視野に入れている。労働集約型産業の構造変化を促す可能性を秘めた動きとして、今後の展開が注目される。


