中国の中小ロボットメーカーが、世界の産業用ロボット市場に静かな革命を起こしている。スイスのABB、日本のファナックと安川電機、ドイツのクーカという「ビッグ4」が長年支配してきた市場構造が、いま根底から変わりつつある。
成都CRP、Link-Touch、Ti5 Robot、北京X Humanoidといった企業名を知る人は少ない。しかし、これらの中国企業が開発する産業用ロボットは、従来の大手メーカー製品の約6割の価格で同等の性能を実現している。電気自動車の車体溶接から、ほうきやボールペンの製造まで、幅広い用途で活躍し始めた。
中国は11年連続で世界最大の産業用ロボット市場となっており、昨年は29万5000台が新規導入された。これは世界全体の過半数を占める規模だ。注目すべきは、今年初めて中国国内で導入された産業用ロボットの55%が自国製になったことである。
この変化の背景には、中国で形成された独自のサプライチェーンエコシステムがある。Link-Touchが製造する6次元力覚センサーは1000分の1の精度を誇り、世界市場の70%のシェアを握る。上海のTi5 Robotは高精度な関節モジュールシステムを開発し、サムスンやクアルコムなど海外企業からも注文を受けている。
人工知能の統合により、産業用ロボットは単純作業から柔軟な協働作業へと進化している。北京X Humanoidは「一つの頭脳で複数の能力、複数の機械を制御」する世界初のプラットフォーム「慧思開物」を発表した。チップとロボットOSの統合により、機能性を高めながら製造コストを削減する技術革新が進む。
この動きは中国の製造業だけでなく、世界の産業構造にも影響を与えている。労働集約型産業において、中国の輸出シェアは2019年から2023年にかけて9ポイント上昇し52.3%に達した。インドの平均工場労働者の月給が約167ユーロなのに対し、中国の東莞では626ユーロという賃金格差があるにもかかわらず、ロボット導入により競争力を維持している。
従来、労働コストの上昇とともに労働集約型産業は他国へ移転するというのが経済の常識だった。しかし中国は、手頃な価格の産業用ロボットを大量導入することで、この法則を覆しつつある。製造業における自動化は、もはや選択肢ではなく必須の要件となった。世界のサプライチェーンは、この静かな革命により再編される可能性が高まっている。


