026年1月5日、米ラスベガスで開催されるCES 2026において、韓国のヒュンダイ自動車グループがAIロボティクス戦略を発表し、傘下のボストン・ダイナミクスが開発した次世代ヒューマノイドロボット「Atlas」を世界初公開する。研究室から実用化へと移行する歴史的な瞬間となる見込みだ。
なぜヒュンダイがヒューマノイドロボットに本気なのか?
ヒュンダイは2020年、約1,100億円でボストン・ダイナミクスを買収した。この投資が今、大きな果実を実らせようとしている。今回のCES 2026では「Partnering Human Progress(人類の進歩とともに)」をテーマに掲げ、AIロボットが研究段階から実用段階へ移行するビジョンを示す。
新型Atlasは従来の研究用モデルとは異なり、製造現場での実用を想定して設計されている。高度なAIを搭載し、環境をリアルタイムで学習しながら、在庫管理や組立ラインの支援といった複雑な作業をこなすことができる。起伏のある地形でも安定して移動し、精密な動作が可能だ。
ソフトウェア定義ファクトリー(SDF)とは何か?
ヒュンダイが提唱する「ソフトウェア定義ファクトリー」は、データとソフトウェアによって生産プロセス全体を最適化する次世代スマート工場のコンセプトだ。ロボットの開発から学習、訓練、運用までの全工程を統合管理する。
具体的には、Atlasに加えて四足歩行ロボット「Spot」や物流ロボット「Stretch」を韓国内のヒュンダイ・起亜の主要工場に順次導入予定だ。2026年には米国ジョージア州のメタプラント(EV専用工場)でAtlasの試験運用を開始する。自動車部品の仕分けや移動といった基本作業を自律的に行う計画である。
急成長するヒューマノイドロボット市場
ゴールドマン・サックスの予測によると、ヒューマノイドロボット市場は2035年までに380億ドル(約5.7兆円)規模に成長する見込みだ。2030年には25万台以上の出荷が見込まれ、その大半が製造業向けとなる。
さらに、モルガン・スタンレーは2050年までに市場規模が5兆ドル(約750兆円)に達すると予測している。これは自動車産業の2倍に相当する規模だ。ヒュンダイがこの分野に注力する理由がここにある。
製造コストも急速に低下している。最先端モデルで25万ドルだったものが現在は15万ドル程度まで下がり、普及の条件が整いつつある。
人間とロボットの協働が変える未来
ヒュンダイのアプローチで注目すべきは「人間との協働」を重視している点だ。完全自動化ではなく、危険・汚い・単調な作業をロボットが担い、人間はより創造的な業務に集中できる環境を目指している。
CES 2026の展示では、人間のオペレーターとロボットが共同で作業するシナリオをデモンストレーションする予定だ。安全プロトコルとAIによる適応学習の能力を実証する。1月6日から9日まで、ラスベガス・コンベンション・センターで体験型展示も行われる。
ヒュンダイの次なる一手
ヒュンダイは同時に、韓国・安城に1.2兆ウォン(約818億ドル)を投じたバッテリー研究施設を建設中だ。2026年末の完成予定で、EV用次世代バッテリーの研究開発拠点となる。ロボット技術とバッテリー技術の両輪で、次世代モビリティのリーダーシップを確立する狙いだ。
CES 2026の発表は、自動車メーカーからAIロボティクス企業への転換を宣言する重要な機会となる。トヨタやフォルクスワーゲンといった競合他社も注視する中、ヒュンダイの戦略が業界全体に与える影響は計り知れない。
まとめると、ヒュンダイは研究段階から実用段階へと移行するヒューマノイドロボット市場において、先行者利益を確保しようとしている。2026年は人間とロボットが共存する新時代の幕開けとなるかもしれない。


