中国の電動車メーカーXPengが、物理世界におけるAI活用で新たな一歩を踏み出した。同社は11月5日に開催した技術発表会「2025 AI Day」で、従来の「未来モビリティ探求者」から「物理世界のモビリティ探求者であり、グローバル実体知能企業」へと企業ポジショニングを刷新すると発表した。
今回の発表で注目を集めたのは、独自開発の大規模モデル「VLA 2.0」だ。従来の言語モデルが視覚情報を言語に変換してから行動を生成していたのに対し、このモデルは視覚信号から行動指令へ直接変換する「ビジョン-暗黙トークン-アクション」という新たなアプローチを採用。業界標準となっていた処理プロセスを根本から見直し、処理速度と精度の向上を実現したとされる。
同社CEOの何小鵬氏によれば、このモデルは自動運転車だけでなく、人型ロボットや空飛ぶクルマにも横断的に適用可能だという。実際に720億パラメータの超大規模モデルをクラウドに展開し、5日ごとにフルサイクルの更新を行える体制を構築。約1億クリップの実走行データを学習に活用し、人間のドライバーが6万5000年間の運転で遭遇する極限状況に相当するシナリオを網羅しているという。
Robotaxi分野では、2026年に3車種を投入し、試験運用を開始する計画を明らかにした。従来のRobotaxiが抱えていた改造コストの高さや運用範囲の制限といった課題に対し、同社は純粋な視覚ソリューションに依存し、LiDARや高精度地図を不要とする方式を採用。車載コンピューティング能力は3000TOPSに達し、現時点で世界最高水準を実現したとしている。
人型ロボット分野では、次世代モデル「IRON」を披露した。人間の背骨を模した構造や生体模倣筋肉、柔軟な皮膚で全身を覆うなど、極限まで人間らしさを追求。全身82自由度、手だけで22自由度を持ち、業界初となる全固体電池の採用により軽量化と高エネルギー密度を両立させた。2026年末までに大規模量産を目指すという。
空のモビリティでは、個人向け短距離飛行体験の「陸空母艦」と、多人数長距離移動向けの「A868」という2つのシステムを展開。陸空母艦はすでに世界で7000台以上の受注を獲得しており、2026年の量産開始に向けて11月3日に試験生産を開始。年間1万台の生産能力を持つ工場では、フル稼働時には30分に1台のペースで製造が可能になるという。
今回の技術開放戦略も興味深い。VLA 2.0モデルをグローバルパートナーにオープンソース化すると発表し、フォルクスワーゲンが最初の採用企業となることが明らかになった。Robotaxiではアリババ傘下の高徳地図と提携し、人型ロボットでは宝山鋼鉄と協業して産業現場での実証を進める。
デジタル世界と物理世界の融合が加速する中、XPengの統合型アプローチは新たな産業構造の可能性を示唆している。日本の自動車産業やロボット産業にとっても、個別最適から全体最適へ、そして異業種連携による価値創造へと戦略転換を迫られる時期が来ているのかもしれない。


