中国AgiBot、強化学習ロボットの工場実装に成功 生産ラインの柔軟性を飛躍的に向上

産業ロボット

中国のロボット企業AgiBotが、強化学習技術を活用した産業用ロボットの実運用に世界で初めて成功した。電子機器製造を手がけるLongcheer Technologyとの共同プロジェクトで、パイロット生産ラインでの検証を完了。高度なAI技術と実際の製造現場を結びつける重要な一歩となった。

精密製造の現場では長年、硬直的な自動化システムが課題となってきた。複雑な治具設計、長期にわたる調整作業、高額な再構成コストが生産性向上の足かせとなっている。視覚制御と力制御を組み合わせた最新システムでも、パラメータの感度が高く、導入サイクルの長期化やメンテナンスの複雑さに悩まされてきた。

AgiBotが開発したリアルワールド強化学習(RW-RL)システムは、ロボットが工場の現場で直接学習し適応する能力を実現。新しいタスクの習得時間を従来の数週間からわずか数十分に短縮することに成功した。部品の位置ずれや公差の変動といった製造現場で日常的に発生する変動要因にも自動的に対応し、長期運用でも100%のタスク完了率を維持できることが実証された。

製品モデルの変更や生産ラインの切り替え時にも、最小限のハードウェア調整と標準化された導入手順のみで対応可能となる。カスタム治具や専用工具を必要とせず、短時間の再学習で新たなタスクに対応できるため、多品種少量生産が求められる消費者向け電子機器製造において、柔軟性とコスト削減を両立させる道筋が見えてきた。

同社のチーフサイエンティストであるJianlan Luo博士率いる研究チームは、強化学習の安定性と実用性を高める学術的成果を産業応用へと発展させた。知覚・判断といった知能面と動作制御の深い統合により、アルゴリズムの知能と物理的な実行を統一する重要なステップを実現している。

今回の技術は、ワークスペースのレイアウトや生産ラインの構成が異なる環境でも高い汎用性を示しており、多様な産業シナリオへの迅速な転用が可能だ。実験室レベルのデモンストレーションにとどまらず、実際の生産条件下での検証を完了したことで、最先端研究から産業グレードの実装への完全なサイクルが確立された。

AgiBotとLongcheer Technologyは今後、消費者向け電子機器から自動車部品まで、より幅広い精密製造分野へこの技術を展開していく計画だ。既存の生産システムとシームレスに統合できるモジュール式のロボットソリューション開発に注力し、製造業のデジタル変革を加速させる。人間の作業者が担ってきた柔軟な対応力をロボットが獲得することで、製造現場の人材配置や生産性の概念そのものが変化していく可能性が高まっている。

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